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ワークマン高品質×低価格のトレードオフ

2023-02-07 19:01:02 guanli 63

高品質で低価格――言葉としてはありふれているが、こと実現するとなると、トレードオフの関係にある両者を成立させることは難しい。

しかし、「高品質で低価格」を究極にまで両立させているのが、作業服トップシェアのワークマン(群馬県/小濱英之社長)だ。国内に977店舗(202212月末現在)のチェーン店をかまえ、近年では「ワークマンプラス」「#ワークマン女子」とカジュアル衣料も積極的に展開。全店の売上高は約1566億円(2022年3月末)を誇り、目下11期連続で最高益更新と絶好調だ。

「リペアテック」「フレイムテック」など新開発の素材を続々と打ち出しながら、ダウンジャケットでも5,000円を切る別次元の低価格を実現する、ワークマンの「高品質×低価格」の秘訣はどこにあるのだろうか。

独自技術のヒット商品を続々と開発


リペアテックの生地修復イメージ
リペアテックの生地修復イメージ


 生地に穴が空き、羽毛が吹き出してしまう……そんなダウンジャケットの悩みを解消したのが、ワークマンが開発した、穴を自己修復(リペア)する特殊製法をほどこした生地「リペアテック」だ。そのリペアテックを使用した「洗えるフュージョンダウン」が目下大ヒットで、年間50万を売り上げている。

 また、耐熱性のある樹脂の被膜によって火の粉などの飛び火による穴あきを軽減した「フレイムテック」を使用したアウターも、焚火などアウトドアシーンでのニーズをとらえて人気となっている。

 その他にも、自身が発する熱を跳ね返して保温性を高める「裏アルミプリント」、電熱ヒーターを内蔵した“着るコタツ”こと「ヒーターベスト」など、ワークマンでは独自技術によって開発したアイテムを続々と打ち出し、そのどれもが飛ぶように売れている。いったい、どれほどのエンジニア人材を集めた研究開発拠点があるのか――と製品開発部長の柏田大輔氏に聞いてみると、「いえ、そんなものはありません」と笑われてしまった。

 「素材技術の企画・開発を主導するのは、あくまでワーク衣料、アウトドア衣料、スポーツ衣料をそれぞれ担当する社員。彼らが日ごろから問題意識を持ち、お客さまが何を必要としているか、そのニーズを実現するにはどうすればよいかを常に考え、商品に落とし込んでいる」

「価格」を先に決め、実現まで粘り続ける“発注力” 


リペアテック洗えるフュージョンダウン
2022年モデルのリペアテック洗えるフュージョンダウン。裏地はブラックのアルミプリント


 これらの新技術を次々に開発しながら、さらに驚くべきはその価格だ。「リペアテック」を使用した2022年モデルのダウンジャケットは3,900円、「フレイムテック」のダウンジャケットは4,900円。もはや「格安」の一言で表現できるレベルを超えた価格設定だ。

 なぜ、ここまでの低価格を実現できるのか? 製品開発部マーチャンダイザーの牧野康洋氏は「『売りたい価格』を先に決め、そこからブレないことを原則としている」と語る。

 「より多くの方に買ってもらえるにはどうすればよいかをまず考え、市場価格の2分の1、さらには3分の1の価格をまず設定する。その前提で、実現したい商品の開発を進める。一度決めた価格を動かすことはない」(牧野氏)

 そのためには「『諦める』ではなく『割り切る』ことが重要」と柏田氏。生地、ボタン、ファスナー、縫製技術など細部まで徹底して見直し、余分なスペックや工程をそぎ落とす。

 同時に、低価格を実現するポイントは、“発注力”とも形容すべき、取引するベンダーへの発注の工夫にある。

 ワークマンの全チェーン店(直営店・加盟店)は、全国に977店舗(202212月末現在)。これはユニクロの国内店舗数(809店舗/20221020日現在)を上回る規模だ。だからこそ、一定量のボリュームを確保して発注することができる。

 さらに、ワークマンのアイテムは「最低でも5年間は同じものを作り続ける」(牧野氏)。流行に左右されずロングライフで着られるアイテムなので、ベンダーも長期の取引を確保した上でボリュームディスカウントに応じられるというわけだ。

 ワークマンの“発注力”はそれだけにとどまらない。「3社見積り・1社決定」を徹底し、必ず3社以上の取引先を価格・品質両面で競わせた上で、最善の提案をした1社を選定する。加えて、なるべく工場の稼働が低い閑散期をねらって発注する。「各ベンダーとの交渉を重ねながら、極限まで仕入れ原価を抑え、当初設定した低価格を実現するまで粘り続ける」(牧野氏)


 それができるのも、創業以来40年以上にわたって築き上げてきたベンダーとの信頼関係があってこそだろう。作業服、と一言で言っても「頭のてっぺんから足のつま先まで」そのアイテム数は膨大な数に上る。それぞれ得意分野を持つベンダーと長期にわたって取引してきたことで、「新しいアイデアを、決めた価格で実現できる」ための最良のベンダーを選び、実現することができるのだ。